■建築研究報告 |
耐久性能に関する研究 (第1報) 楡木 堯 建築研究報告 No.94, March 1981. 建設省建築研究所 |
<概要> |
従来より建築と耐久性は不可分の関係にあるが,とくに近年の社会・経済的な状勢からは耐久性能の明確化に対するニーズが高まっている。 耐久性の定量化については,単に材料・部材等の物理的な劣化状況を追求することのみにとどまらず,劣化要因,劣化機構の究明,さらには劣化特性と建築物などが所定の性能を維持してゆくに必要な耐久性能との関連についても考慮する必要がある。 本報は,上記の一連のニーズに対応するための第一段階として,耐久性に対する考え方を整理し,建築材料・部材のもっている耐久性能をいかに評価するかという点に絞り,屋外ばくろ試験方法及び実験室内での促進的試験方法の在り方,問題点を実験結果をもとづいて取りまとめたものである。 第1章においては,耐久性に対する現状のニーズとこれに対応した建築研究所での耐久性研究の経緯の概要を示し,第2章においては耐久性研究の目的と,その研究方針を示した。研究の基本としてはPerformance Conceptに立脚すること,さらに具体的には屋外ばくろ試験,促進ばくろ試験及び実態調査の三つのアプローチと,これら三者の整合を図って耐久性能を究明してゆくこととしている。 第3章では,耐久性に関する国外の研究の経緯を概括し,本報告での耐久性能に関する考え方と耐久性に関連する用語の定義を示したが,とくに本研究では耐久性能を,「性能をある水準以上の状態で継続して維持する能力」として取り扱っている。 第4章では,耐久性能に関連する一般的な要求条件,要求性能を整理した。 第5章では,建物,部材,材料等の耐久性能に影響を及ぼす劣化外力(要因)の定量化の重要性に鑑み,その第1段階として温度,湿度,日射量などの一般的な劣化外力を実測結果及び既往の資料にもとづき分類・整理し,各外力毎にグレーデングした。 第6章では,建築材料・部材の耐久性能評価手法として,高い信頼性があるとされて来た屋外ばくろ試験について,その効用,具体的な手法の種類と特徴等を試験結果にもとづき詳記し,あわせて評価手法として問題点についてもふれた。 第7章においては,実験室内で行われる促進ばくろ試験について,現状で採用されている手法を概括し,その効用と各手法の特徴(対象とする材料の種類,現状寸法,賦与する劣化外力とそのインテンシティー等)を具体的な試験結果にもとづき詳記し,現実的な耐久性能データーを得るため,さらに屋外ばくろ試験結果との対応を考慮した促進ばくろ試験の効果的な活用と問題点についてふれる。 第8章においては,建築材料・部材の耐久性能評価という面からみた今後の問題として,自然ばくろと促進ばくろ試験の関係の明確化,さらに最近の社会的ニーズである維持保全省資源問題等に対応した成果を得るために補修技術と補修効果の評価等,に着目する必要性を指摘する。 なお,各建築材料・部材の劣化性状(防食,耐候性等)に関しては次報以下に報告予定である。 |