■建築研究報告 |
常時微動の解析法に関する研究 中島 直吉 建築研究報告 No.70, 1975 建設省建築研究所 |
<概要> |
地球の表面近くの地盤は,主として人類の生存に起因する種々の振動源,例えば交通機関または工場などの操業により,さらには水の流れまたは風などの自然現象により常時微振動をしている。 この微振動の周期および振巾の大きさは地盤の性状により著しく異なるものであるが,その周期の範囲はおよそ0.05秒から数秒まで,振巾の大きさは0.05ミクロンから10数ミクロンの範囲であることがこれ迄の測定結果から知られている。このような地盤の微振動を常時微動と呼んでいる。 さて,地震による被害の分布が地盤の振動性状と密接な関係であることはかなり古くから知られていることである。地盤の常時微動が提供する情報は,この地盤性状を知る1つの有力な手掛りになるものとして多くの人達によって詳しく研究され,有用な成果が得られている。例えば,常時微動の周期頻度解析から得られる地盤の振動卓越周期は,その地盤上で記録される破壊的な地震動の卓越周期に極めて近い値であることから,耐震構造物の設計における重要な参考資料と考えられるようになってきた。また常時微動の振巾特性は,それが得られた地盤の震動特性をよく反映することから,地震工学上における地盤種別に適用されるようになった。なお地盤種別は,大地震の際に木造家屋が受ける被害率と密接な関係をもつことが明らかにされている。 しかしながら,常時微動がもつ基礎的な性質,とくにその伝播性および微動の卓越周期と地下構造との関係については,必ずしも明らかにされているとは云い得ない。 筆者は今回,先づ常時微動の周期頻度解析について若干の検討を行い,微動の伝播性を表面波の分散曲線に着目して解明することを試み,併せて微動が示す諸性質の地下構造の推定における有用性について調べた。 |