■建築研究報告 |
原子力利用施設に関する研究 建築研究所原子力研究連絡会 建築研究報告 No.25, 1958 建設省建築研究所 |
<概要> |
戦後、わが国においては、放射性物質を利用するための建築物が次第に建設されつつあったが、これらは放射線の障害防止のため非常に建築上の注意を要するにもかかわらず、その点がわが国では殆ど顧みられず研究もあまり行われていなかった。しかるに、昭和31年度において、日本原子力研究所の第1原子炉が構築されるようになってから、実験研究の必要性がとみに痛感されるようになった。 建築研究所では上記の情勢に対処するために、昭和30年秋以来所内に原子力研究連絡会を設け、藤井研究員を主査とし各研究部より関係研究員が参加して必要研究をつづけて来た。 昭和31年度においては「耐放射線構造物の実験研究」という題目のもとに、主として原子炉用構築物、放射性物質利用研究室、工場等の諸施設を建築するための実験研究を行った。また原子炉の遮蔽体の構築については原子力研究所からの委託もあったので、昭和31年4月以降同年12月にいたる間は、特に重量コンクリートの調合と施工法および高密度コンクリートブロックの製造法等、原子炉の遮蔽体の施工のための研究に全力を集中した。その研究結果が東海村の原子力研究所における第1号原子炉の構築に直接に利用され役立っている。またこれと併行して、放射性物質を利用する建築物に用いられる表面仕上材料や排気処理用のフィルターの性能試験を行った。 一方、昭和31年6月中旬建築研究所内に「放射性物質利用施設設計基準委員会」を設け、藤井研究員を主査とし建築研究所関係研究員をはじめ、建設本省あるいは原子力研究所よりも関係者の参加を得て、放射性物質利用施設に関する内外の文献を調査するとともに上記の研究結果を盛り込んで、10月には「放射性物質利用施設設計基準(案)」をまとめ、別に印刷して関係方面に配布したが、幸いこれら施設の設計・施工に非常に役立っていることは喜びに堪えない。 本報告は当研究所で行った研究の中で、上記の設計基準を除いたものの総合したものであるが、研究がいまだ終了していない中間報告も含まれているし、また急を要したために拙速を旨とした面も多分にあるので、関係各方面からのご叱正、ご協力を得なければならない。 昭和32年12月 |