■建築研究報告

Geotechnical Properties of Kanto-Loam & Its Anisotropy

Yorihiko OHSAKI

建築研究報告  No.21,  1957  建設省建築研究所


<概要>
  関東ローム層は、東京山手を含めて関東地方における広範囲な部分に分布し、火山灰の堆積物よりなる地層で、ごく地表面附近にある関係もあって、建築物の支持地盤として広く用いられ、その土質工学的な性質いかんは基礎構造の合理的設計にあたってきわめて重要なものである。
  筆者は東京における建築地盤の土質工学的性質に関する研究の一環として、まずこの関東ロームを取り上げ、各種の標準的な土質試験をおこなって見たが、今までに知られている一般の地盤に比して、きわめて特異な性質を示す点の多いことに注目せられたので、ここに取りあえず結果の一部をまとめて報告する。
  実施した試験の種類は、(1)圧密試験(2)直接剪断試験(3)1軸圧縮試験および(4)液塑性限界試験等であるが、これらの結果は3図ないし9図に示されてあり、またこの結果求められた主要な指示土性の値を一括して最後の表2に掲げてある。

  これらの結果より、特に関東ロームの特異な性質として挙げられるものは

(1)  間隙比の値がe = 4に近くて異常に大きい

(2)  強度特性としては、粘着力c = 0.5kg/cm2内外、内部摩擦角φ= 40〜45°程度で、比較的高い強度を示すものであるが、これに反して圧縮指数の値がCc = 1.4〜1.8にも達していて、きわめて圧縮性すなわち沈下の大きい地盤である

(3)  液性限界試験における流動曲線の形は、通常半対数目盛で直線をなすものと考えられていたが、ここで試験した関東ロームでは明瞭に折れ曲がった2つの直線部分からなることが認められた(8図)等の諸点である。

  関東ローム層が風成であるか水成であるかについては未だ定説がないようであるが、この点の解明にも関連ある問題として、上記の諸試験をおこなう際、鉛直・水平の両方向についておこなってみて両者を比較したが、結果は両者についてなんらの差異が認められず、むしろきわめて均質等方性の堆積層であることが結論せられた。

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