■建築研究報告

燒ビルの耐力診斷並に補強  
−燒ビル調査綜合報告−

共同研究

建築研究報告  No.2,  昭和24年4月  建設省建築研究所


<概要>
  去る昭和23年6月28日の北陸地震に於いて福井市の鋼筋コンクリート6階建大和ビルディングが崩潰した。この原因に就ては種々論議されているが、此の建物が戦災で一度火害を受けたものを充分の補強をしないで使用したと云ふことが一つの重大な原因をなして居ると云ふことは一應各方面の一致した意見である。從て此の災害後燒ビルに對する關心はとみに高まり、今後再使用計畫中のものは勿論、一旦使用中のものも再診斷の上適當な補強を講じようと云ふ愼重な態度が多く見られる様になつたことは誠によろこばしいことである。
  燒ビル診斷の問題に關しては、本研究に於いても昭和22年夏之の調査を行つたことは既に研究所要報に發表された通りであるが、その後官廰、民間各方面の依ョに應じ若  の鋼筋コンクリート乃至はレンガ造の燒ビルの耐力診斷並びに補強計畫を立案した。その主なる例を擧げれば下の如くである。

鋼筋コンクリート
  専賣局業平工場、三和銀行福井支店、是則倉庫福井支店、福井第三人絹會館、福井税務所、福井縣廰舍其他

レンガ造
  最高裁判所廰舍(元三裁判所廰舍)、法務廰々舍(元司法省)、國會圖書館(元参謀本部)、水戸専賣局煙草製造工場、元海軍省廰舍其他、

  燒ビルの診斷法に就いては未だ適確な方法はなく、補強に關しても種々研究すべき問題が殘されて居るが、本報告に於いては一應從來の研究結果のみをとりまとめ、不明の點、今後の研究に俟つべき點は之を明示して、此の方面の設計者並に研究者の御參考に供し度いと思ふ。尚本資料の原案は、II 2)は川越、II 4)5)6)は栗山、附録は久田、其他は竹山が主としてその執筆を擔當したが、上記各研究員の他西、淺野、碓井、龜井、竹之内、小坂、岩田等各研究員の研究に負ふ處が多い。

  尚本報告の印刷に當つては内藤博士、坂博士、谷口博士、武藤博士其他日本建築擧會燒ビル委員會や燒ビル研究會の諸賢の御忠言により訂正補筆した個所も多い、記して感謝の意を表す。

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