■建築研究報告

建築基準法に基づく構造方法基準の備えるべき要件と評価方法に関する研究
- 鉄筋コンクリート造の構造方法基準を例として
-

五條 渉

建築研究報告 No.146号(2010(平成22年)12月)
独立行政法人建築研究所
118p


<概要>

 建築基準法第20 条に基づく構造安全性に関する要求を定めた技術基準は、同法施行令およびそれに基づく大臣告示により規定されているが、それらは、大きく、構造方法基準と構造計算基準の2つの部分により構成されている。そのうち、構造計算基準については、1981 年(昭和56 年)施行の新耐震設計法の導入の施行令改正、2000 年(平成12 年)施行の性能規定の導入に伴う限界耐力計算の新設などの法令改正、2007 年(平成19 年)施行の構造計算書偽装事件を受けた法令改正などにおいて、全体的な構成や内容について、大幅な見直しがなされている。それに対し、構造方法基準については、それらの改正により構造関係規定における構造方法基準の位置づけや役割に変更がなされたにもかかわらず、いくつかの個別の規定について、地震被害の再発防止や、技術の進歩に応じた見直しがなされ、また、2000 年改正において、判断基準の明確化のため、相当数の規定に対して抽象的規定の明確化(大臣告示への委任)などが行われているものの、例外的に数次にわたり相当程度の改正がなされている木造の基準を除けば、全体的な構成や個々の規定の基本的な内容については、それほど大きな見直しはなされていない。
 これらの近年の構造関係規定の改正については、構造計算基準を中心に、規定内容が詳細化され、複雑・難解なものとなったことなどに関し否定的な見解も示されており、その内容の評価や今後目指すべき方向性などについては、建築確認などの適合性の審査の仕組みや運用、建築士法などに基づく関連する制度のあり方も含め、今後も積極的に議論や研究がなされるべきであるといえるが、本研究では、そういった議論などが主として構造計算基準を対象に行われているのに対し、あまり着目されることのなかった構造方法基準について、その本来の目的や役割、あるいは建築関係者および一般国民のニーズに照らして見た場合の現状と課題を分析し、構造方法基準が備えるべき要件の明確化を行った上で、同基準の適切性の評価方法の提案を行っている。構造方法基準が、建築基準法の技術基準として、構造安全性の確保という目的を達成するために、その役割に応じて適切な内容であるべきことを基本としつつ、その他の要請への対応として、それが円滑に運用され得ること、設計の自由度を過度に阻害しないこと、構造方法基準が果たしている構造安全性の確保以外の役割についても支障が生じないことなどにも留意し、また、必ずしもすべての必要な基準を定めるのではなく他の手段により代替するという選択肢の採用の可能性も含め、分析・考察を加えている。
 本報告は、序章とそれに続く5 章から構成されるが、そのそれぞれの概要は、以下のとおりである。
 第1章「構造方法基準の建築基準法令における位置づけと役割」においては、第2 章において構造方法基準に求められる要件を明確化するために必要なものとして、以下の分析と情報の抽出を行っている。まず、構造方法基準が、建築基準法の構造関係規定の構成要素として備えるべき最も基本的な要件である「構造安全性の確保のための要件」を明確化するために把握が必要な、建築基準法令における構造関係規定の全体構成とその中での構造方法基準の位置づけと役割について、法制定以来の変遷とともに整理して示している。重要なポイントとして、法制定当初は、法第20 条の規定への適合性を判断するための補足的基準として設けられた構造方法基準が、2000 年の法令改正において、同条に基づく要求基準としての位置づけを与えられたこと、構造計算基準のルートの複数化や、検証対象となる構造安全性能項目の増加に伴い、構造方法基準の基本的役割が変化していることなどが明らかにされている。続いて、その他の要件の明確化のために必要なものとして、構造方法基準以外で定められた構造方法に関する規定の項目・内容や、 構造方法基準の適合性の審査手続きなどの規定の概要が示されている。


表紙、はしがき 224 KB
概要、Abstract 115 KB
目次 46 KB
序章 212 KB
  第1章 222 KB
  第2章 231 KB
  第3章 218 KB
  第4章 351 KB
  第5章 186 KB
今後の課題 103 KB
付録 25 KB
A3付録 1.22 MB
奥付 21 KB
   
全文 2.76 MB

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