■建築研究報告 |
エコセメントを使用したコンクリートの物理・力学特性ならびに調合設計・施工技術に関する研究 棚野博之*1,鹿毛忠継*2,濱崎仁*1,横山滋*3,田中敏嗣*4,長塩靖祐*5, 建築研究報告 No.144 平17年12月 独立行政法人建築研究所 |
<概要> |
本報告は,エコセメントを使用したコンクリートの化学的性質,物理的性質,力学的性質を明らかにするとともに,コンクリート用材料として使用するための調合方法,管理方法などを試案としてまとめたものである。 近年の廃棄物の発生量は増加の一途を辿り,それらの処理,処分は大きな社会問題となっている。また,これらの焼却灰を資源として活用することが望まれている。エコセメントは,都市ゴミ焼却灰や下水汚泥などの廃棄物を主原料とし,石灰石などを補填材料として成分調整して焼成したクリンカーを粉砕して製造される。都市ゴミ焼却灰にはセメントに必要な成分が含まれるため,製造されたセメントは普通ポルトランドセメントと似た性質を有するが,化学成分,粉末度などが異なることからその物理特性,力学特性も異なることが予想される。 本研究は,エコセメントを用いたコンクリートを鉄筋コンクリート構造物へ適用するための技術的検討として,それらの物理特性,力学特性,耐久性等を明らかにすることを目的としている。本研究においては,エコセメントを用いたモルタルおよびコンクリートについて以下の項目に関する実験を行った。 1)エコセメントおよびエコセメントを使用したモルタルの物性に関する検討 2)エコセメントを使用したコンクリートの調合,物性に関する検討 3)エコセメントを使用したコンクリートの施工性に関する検討 結果として,エコセメントを用いた場合のコンクリートの長期強度発現,耐久性等については,同調合の普通ポルトランドセメントを用いた場合と比較すると若干低下する場合があるものの,水セメント比の低減などの対策を取ることによって,鉄筋コンクリート構造物へ適用可能であることが確認された。 また,これらの結果をもとに,工事管理者や生コン製造者などがエコセメントを使用するうえで留意しなければならない点を試案「エコセメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針(案)・同解説」としてまとめた。 本研究の成果が広く活用され,地域環境問題さらには地球環境問題に対する建設分野の有用な技術的貢献となることを期待するものである。 *1 独立行政法人建築研究所 材料研究グループ |