平成5年釧路沖地震における地震記録とその建物破壊力の検証
杉村義広, 翠川三郎, 田才 晃, 飛田 潤, 壇 一男,
山内泰之, 北川良和, 大川 出, 鹿嶋俊英
建築研究報告 No.134,1996 建設省建築研究所
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<概要> |
わが国は古来より幾多の大きな地震を経験してきた。現在では世界的にもトップクラスとされるわが国の建築物の耐震性能は、このような貴重な経験の上に成り立っている。
震災経験が豊富なわが国であるが、それらを耐震設計に生かすためには、多くの課題がある。たとえば建築物の構造性能が昔とは大きく変化しているため既往の被害の解析による知見をそのまま当てはめることができないこと、あるいは1923年の関東地震以来、首都圏では大きな地震が発生していないことなど現存する新しい耐震設計法による都市建築物が大地震による洗礼を受けておらず実地的経験が必ずしも豊富ではないことなどがあげられる。このため建築物が将来起こるであろう大地震時にどのような挙動を示すかどうかについてはいまだ不確定な部分が多い。
平成5年1月15日夜に発生した釧路沖地震では、北海道釧路市内で700、900ガルという今までにない加速度を記録した。しかしながら、建築物被害は僅少であり従来の図式から推測される被害程度とはまったくかけ離れたものであった。
ここでわれわれが検討すべきこととしては、建築物が本当に強くなったのかどうか、実際の設計ではどの程度の地震入力レベルを考えなければいけないのか、あるいはこれは釧路市だけが有する特殊な事情(条件)であるのか等があろう。
幸いにも平成5年度国土庁災害対策総合推進調整費により、現地の地盤調査や地盤・建築物の地震応答解析による地震時挙動の検証を行うことができた。本調査は前記国土庁予算による「平成5年度釧路沖地震の被災事例による建築物の耐震対策調査」の成果をまとめたものである。本報告が建築物の耐震設計法の合理化、高度化の一助となれば幸いである。
なお、同調査を円滑に進めるために、(社)建築研究振興協会の中に同名の調査委員会を設置し検討を進めた。以下に委員会構成を示す。
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平成5年釧路沖地震の被災事例による建築物の耐震対策調査委員会
委 員 構 成 |
委員長 |
杉村義広 東北大学工学部建築学科教授 |
委員 |
翠川三郎 東京工業大学総合理工学研究科教授
飛田 潤 東北大学工学部建築学科助手
田才 晃 東京大学工学部建築学科助手(現大阪工業大学助教授) |
委託者側委員 |
山内泰之 建設省建築研究所第三研究部長
北川良和 建設省建築研究所国際地震工学部長(現(社)建築研究振興協会) |
受託者側委員 |
佐藤慶一 (社)建築研究振興協会 |
委託者側幹事 |
大川 出 建設省建築研究所第三研究部基礎研究室長 |
受託者側幹事 |
村田洋治 (社)建築研究振興協会 |
第2回委員会より参加 |
委託者側幹事として |
鹿嶋俊英 建設省建築研究所国際地震工学部研究員 |
オブザーバとして |
阿部秋男 (株)東京ソイルリサーチ |