鉄筋コンクリ−ト造外壁の高分子仕上げ塗材の中性化抑制機能とその劣化機構
福島敏夫, 本橋健司
建築研究報告 No.127, August, 1990, 建設省建築研究所
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<概要> |
本研究報告は,建築材料・部材の耐久性予測に関する研究の一環として,鉄筋コンクリート造外壁の高分子仕上塗材が,コンクリートの中性化の抑制にどのように機能し,また,その劣化がどのようにして起こり,その劣化が中性化抑制機能にどのように影響するかについて,経時変化とそのメカニズムの速度論的な解明という観点から,理論的・実験的研究及び実態調査を基にして,取りまとめたものである。
高分子仕上塗材は,紫外線等による劣化と接着耐久性の問題はあるが,外部からの劣化外力である二酸化炭素の遮断によるコンクリートの中性化に対する抑制機能を有し,その効果は,コンクリートの中性化に関する,定数項を含む一般的な放物線則の2つのパラメーターに反映され,抑制機能の経時変化は,暴露時間のべき乗法則(理論的には放物線則)で評価し得ると考えられることが明らかになった。
鉄筋コンクリートの耐久性向上という面から考える場合に,コンクリートの中性化とその抑制方法という問題は,古くてかつ今でもなお新しい研究テーマでもある。コンクリートの中性化進行を有効に遅延または抑制するために,コンクリート自体の品質向上と共に,高分子仕上塗材の中性化抑制機能を利用し,その合理的な選択により,中性化抑制を配慮した耐久設計に役立たせることは,社会的に重要な意義を有すると考えられる。本研究報告は,高分子仕上塗材の中性化抑制効果の定量的評価方法についてその一つの方法論を提供し,鉄筋コンクリート造外壁の耐久性予測のための経時法則の確立に資するものである。
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