<二層ゾーンの概念に基づく>
建物内煙流動予測計算モデル
田中哮義, 中村和人
建築研究報告 No.123, 1989 建設省建築研究所
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<概要> |
本「建物内煙流動予測計算モデル」は,二層ゾーンの概念に基づいて作成されている非定常の火災モデルである。換言すれば,建物内のいずれの空間も,物理的・化学的性質に関して各々一様で明確に分離される2つの層,すなわち上部層と下部層,により満たされると仮定し,火災が発生した建物内の各空間の環境の非定常的変化を予測する。
本モデルに於いては,火源自体の燃焼条件,すなわち燃焼速度,火源面積,一酸化炭素,ススの発生率等は設定値として与えられるが,一方,この火源により引き起こされる諸現象.すなわち各室の上・下部層の温度,厚さ,酸素,二酸化炭素,水蒸気等ガス濃度,室内層・周壁間の輻射・対流熱伝達,各室の圧力,建物内各開口部の流れ等は全て物理的法則に基づいて予測される。
従来の二層ゾーンモデルに比較した場合の,本モデルの理論上の特徴としては,火災プルーム及び開口噴流プルームの部分貫通モデルを導入し,また下層部でのエネルギーの収支も考慮して,上部層にのみならず下部層の変化も予測していることがあげられる。また,実務的利用上の特徴としては,機械的給気・排煙,矩形でない空間形状も扱えるようにしてあること等があげられる。
本報告の第I部は,本予測計算法を設計実務に使用する場合の便を考えて記述した部分であり,本モデルで用いられる理論のまとめ,本モデルに基づいて予測計算を行うために開発した電算プログラムの概要,使用方法,および予測例について述べている。また,電算プログラム自体は専門家の作成によるものではないため,不備あるいは不便な点もある程度存在すると思われるが,使用者による今後の改良の参考のためにプログラムリストも添えている。
第II部は,主として火災工学の分野の研究者の便宜を目的としたものであり,今回のモデル化に際して検討した技術的事項,特にゾーン方程式及び火災現象を構成する種々要素過程の数学的な定式化についてある程度詳細に記述している。
付録は,本煙流動予測モデルの要となるゾーン方程式の一般的誘導方法を検討した結果を述べたものである。
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