住宅地需要の予測手法に関する研究
石坂公一
建築研究報告 No.113 November 1987 建設省建築研究所
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<概要> |
大都市における住宅地需要を的確に予測することは,都市計画,住宅地開発計画,住環境整備計画等の各種の計画策定の基礎として,重要な課題であるが,従来は,その効果的な予測手法は必ずしも十分には開発されていなかったと言える。本研究は,住宅地需要の実用的な予測手法を開発することを目的として,理論的・実証的な検討を行ったものである。
本研究報告では,まず「都市における住宅地需要の基礎概念について」として,都市における住宅地需要の基礎的な概念を明確化することを目的に,都市の宅地市場に関する基礎的な理論モデルを構成し,このモデルによって,種々の都市計画的な施策が宅地市場に与える影響を比較静学の手法を用いて分析している。
ついで,「住宅敷地規模の分布特性」として,首都圏の区市の市街化区域について,住宅統計調査のデータを用い,一戸建・長屋建住宅の敷地規模の分布特性について分析を行い,首都圏の区市は,敷地規模分布の特性からは,「成熟型」「計画開発・郊外型」「中間型」「スプロール型」の4つの類型に分けることができること,統計的な分析にあたっては,最低敷地規模はおおむね30m2程度に固定して考えても良いこと等を示している。
そのあと,これらの基礎的な分析を踏まえ,「住宅敷地原単位の予測手法」として,住宅地の需要予測にあたって,一番,基礎的な原単位である「一世帯当たりの住宅敷地面積」の予測手法について検討し,予測式を作成するとともに,予測誤差の分析を行い,得られた予測式の適用範囲,予測式の時間的安定性等に関する検討を行っている。
また,敷地規模と並んで住環境に大きな影響を与える「共同住宅率」については,「市街地における共同住宅率の予測手法」として,フローの建築住宅の共同住宅率,一戸建・長屋建住宅の滅失率,共同住宅の滅失率を明示的に採り入れた予測モデルを構成し,その予測精度についての検討を行っている。さらに,得られた共同住宅率の予測式と先に得られた「一世帯当たりの住宅敷地面積」の予測式とを組み合わせて,一戸建・長屋建住宅の敷地面積を予測する手法を提案している。また,これらの検討の過程で,一戸建・長屋建住宅の敷地面積と共同住宅率の間には,「都市化」の進展にともない一戸建・長屋建住宅の敷地面積は一般的には減少するが,ある値以下となると,共同住宅化の傾向が顕著となり,一戸建・長屋建住宅の敷地面積の細分化はそれまでのペースでは進行せず,ある場合には増加することもある等,都市計画的な観点からは興味深い関係があることが明らかとなった。
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