■建築研究報告

地区交通計画における調査方法に関する研究

浅野光行, 松谷春敏, 桐越信

建築研究報告  No.104  OCTOBER  1983  建設省建築研究所


<概要>

  都市圏レベルでの交通計画については,パーソントリップ調査からのデータなどをもとにした総合都市交通体系調査において,その調査方法,計画方法が相当程度確立しているが,地区レベルの交通計画については,各種の事業調査が実施されているものの,調査方法,計画方法に関しては必ずしも統一的な理論展開がなされていないのか現状である。本研究報告は,この地区レベルの交通計画について,その概念,計画プロセス,技術的課題について整理したうえで,地区交通計画のための交通調査を中心とした調査方法について検討を行ったものである。
  本研究報告は大きく2つの段階に分けられる。その第1段階は,地区交通計画の概念,計画の方法,技術的な課題等を整理することであり,第2の段階は,それらの技術的な課題のうち必要データの収集,特に交通データの収集に関する検討を行うことである。各段階における研究の基本的スタンスおよび研究の方法は以下の通りである。
  第1の段階では,本研究報告で扱う地区交通の概念,計画の方法(プロセス)等,検討にあたっての基礎的条件を明らかにする。その出発点として既往の地区交通計画に関連する調査の整理を行う。既往の地区交通関連調査としての対象とした調査は下記の通りである。

  1. 居住環境整備事業調査
  2. 総合都市交通施設整備計画調査
  3. 市街地再開発調査
  4. 土地区画整理事業調査
  5. 歩行者,自転車交通体系調査

  これらの調査における計画目的,計画内容,計画プロセス,調査方法等を整理すると共に,既往の調査・研究文献を参照しつつ,地区交通計画の方法ならびに技術的課題を示す。  第2の段階では,地区交通計画のための調査方法についての具体的な検討を行う。都市圏レベルの交通計画において,その調査,解析,評価方法はパーソントリップ調査を基とした総合都市交通体系調査において,相当程度確立されている。地区交通計画において,人の交通行動に関して多くのデータを持つ都市圏レベルのパーソントリップ調査結果の活用および調査,方法論の地区交通計画への適用性を検討する価値は高いと考えられる。従って,本研究においては,地区の交通調査を検討する基礎としてパーソントリップ調査を取り上げ,これに分析を加えることにより地区交通計画に適合した交通調査のあり方を検討する。具体的な分析内容は下記の通りである。

  1. 都市圏レベルのパーソントリップ調査の地区交通計画への適用性

    パーソントリップ調査データの持つ情報量の豊富さから,これを地区交通計画に利用  することが考えられ,地区交通計画の種々の局面における適用性を検討する。

  2. パーソントリップ調査を補完する地区行動調査の方法

    パーソントリップ調査データによる地区交通情報の補捉の可能性を検討する中から,  地区交通計画に適合した行動調査のあり方を検討する。本研究では,この地区レベルの  行動調査をミクロパーソントリップ調査とよぶ。

  なお,この第2段階では,これらの交通データの収集に関する検討が中心的課題となるが,併せて,地区交通計画のための調査体系および収集された調査データの利用法として「地区交通カルテ」にとりまとめる方法を検討するものである。



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