■建築研究報告

都市交通計画における交通需要予測モデルの評価方法

桐越 信, 浅野光行

建築研究報告  No.103  JANUARY  1983  建設省建築研究所


<概要>

  急激な都市化とモータリゼーションの進展による都市交通の混雑、交通公害、交通事故などのいわゆる都市交通問題は、今日大都市だけではなく全国の地方都市にも及んでいる。これらの都市交通問題は、都市活動の停滞及び都市環境の悪化を引き起こし、都市の発展及び居住環境の向上を大きく妨げている。都市交通問題の解決にあたっては、道路などの根幹的交通施設の整備などを含む総合的な都市交通計画を策定し、これを強力に進める必要がある。この総合的な都市交通計画の策定において最も重要なもののひとつとして将来の交通量の予測がある。これについては、現在までに、統計数理的モデルを基礎にした各種の交通需要予測モデルが数多く提案されている。しかし、交通需要予測モデルの選択方法あるいは評価方法については必ずしも充分な検討がなされていないのが現状である。そこで、本研究では、代表的な交通需要予測モデルである発生重回帰モデルと非集計ロジットモデルをとりあげ、モデルの目的と要件とを明らかにしたうえで、交通需要予測モデルの評価方法について検討を行い、今後の交通需要予測モデルの構築に資することを目的としている。

本研究は全体が6章より構成されている。各章ごとの研究内容を以下に示す。

  • 第1章では、本研究の背景および目的等、研究のフレームを示す。
  • 第2章では、都市交通計画のための現行の調査体系について整理したうえで、総合都市交通計画の策定プロセスについて、その構成ステップを明らかにし、各ステップごとにその内容を概説する。また、都市交通計画における交通需要予測の意義についても述べる。
  • 第3章では、現在最も一般的に用いられる交通需要予測体系について各ステップで使われる交通需要予測モデルも含め、その内容を説明し、そこにおける問題点について整理・指摘する。また、次章以降の展開の基礎となる交通需要予測モデルの目的と要件について本研究での考え方を明らかにする。
  • 第4章では、交通需要予測モデルのうちで、ひとつの代表的なモデルである発生交通量を予測する重回帰モデル(発生重回帰モデル)について、その目的と要件を明らかにし、従来の評価方法について分類・整理したうえで、本研究で提案する予測誤差規準による評価方法についてその有用性の検討を行う。
  • 第5章では、近年盛んに研究が進められている非集計モデルについて、その目的と要件を明らかにし、ロジットモデルを例にモデルの理論的考察を行ったうえで、パラメータ推定値や選択比率の推定値の安定性をもとに非集計ロジットモデルの評価を行っている。なお、ここでは効用値の分布特性に対応した仮想観測値データをシミュレーションにより作成し、そのデータをもとに非集計ロジットモデルの評価についての検討を進める。
  • 第6章では以上の研究結果を総括している。

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