■建築研究資料

3次元CGによる土木建築施設のための景観検討システム
−プロトタイプ版 (Ver.1.0)−

小林  英之

建築研究資料  No.85,  1995,  建設省建築研究所


<概要>

  本システムは、建設省が建設する土木建築施設をより周辺環境に調和したものとしていくために、設計計画の各段階において、建設しようとする施設の景観への影響の検討を支援するためのシステムであり、主として建築研究所が担当して開発する景観シミュレータと、土木研究所が担当して開発する景観データベースが一体となって機能するものであって、以下の方針に基づき開発されたものである。

(1)建設省の現場ニーズにより適合して柔軟に改善ができ、かつローコストで各現場
  に導入できるシステムとするために、独自ソフトとしてソースコードレベルから開発
  し、かつ国に知的所有権が帰属するフリーウェアとして扱い、ソースコードを公開
  する。
(2)パソコン、ワークステーションの性能向上・価格低下が著しく、開発完了後の最適
   のターゲットマシンを特定することが困難であることから、ソフト開発においては移
   植の容易化に配慮する。使用言語は、ANSI−Cを使用する。
(3)コンピュータ操作及び景観検討にあまり経験のない現場においても利用ができる
  ように、マウスを用いてウィンドウからメニューを選択することにより諸機能が起動
  できるようなGUI環境を提供する。また、マニュアルを参照せずとも直ちに操作が
  できるように補足的な情報はヘルプ機能等を用いてシステムによって提供する。

  ここに報告するLSS−VER.1.0は、開発初期の段階において公表するプロトタイプ版であって以下の機能を実現している。なお、LSSは英文梗概に記したように、景観シミュレータの英語の略称である

(1)景観検討上参考となる景観対策事例データベースを検索・表示する。
(2)建設前の周辺環境の写真を、スキャナーによって取り組む。
(3)周辺写真の撮影位置・カメラアングルを復元計算する。
(4)建設を予定する土木建築施設の3次元形状を数値データとして入力する。
(5)土木建築施設を周辺写真と同位置から見た透視図の形で眺めた画像を生成す
   る。
(6)周辺写真と施設を合成表示することにより、建設後の景観を提示する。
(7)土木建築施設の表面仕上げを変更し、検討する。

  これらはまだ5年間の開発の最終目標のうち、ごく一部でしかないが、GUIの基本的なあり方や、プログラムの構成、データ形式等については、一定の方向を提示している。  開発の早い段階で試作版を作成した理由は、可能な限り実際に景観検討を必要としている現場に導入し、使用結果に基づいて改良を加えることにより、より現場のニーズに適合した使いやすいシステムになることが期待されたからである。一方、このような初期の段階のソースコードを公開することとした理由は、関連する民間の技術開発に対して早い段階から情報を提供し、本システムと有機的に使用することのできる支援ソフト等の開発を期待するからであり、またそのような観点からの建設的な批判を受け、開発方針に反映させることを希望したからである。
  本資料においては、プロトタイプ版を構成する17のソースコードを掲載すると共に、景観構成要素を記述する外部ファイルの仕様について解説している。
  次年度以降の開発においては、3次元データとして扱える事物のデータ範囲を拡充すると共に、季節変化・天候変化、材料の経年劣化、市街地の成熟等の時間変化機能を導入し、更に3次元化されたデータを基に、視点位置を変更しながら景観を検討できる機能等を開発していく予定である。


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