集配貨物の搬出入特性と荷捌きスペースの整備
浅野 光行 他
建築研究資料 No.77, 1992, 建設省建築研究所
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<概要> |
本研究資料は、大規模商業・業務施設の周辺や問屋街・商店街等において発生している荷捌き問題の解消を目的として、貨物集配の端末における荷捌きスペース整備のあり方について、荷捌きに関する基本認識、荷捌きスペース整備の基本的な考え方、及び荷捌きスペース整備の具体化に向けてといった視点から考察を行ったものである。
まず第2章では、荷捌きに関する基本的な認識を整理するとの観点から、荷捌きを取り巻く環境を概観するとともに、既存の調査結果のレビューを通して荷捌き施設の現状と荷捌き活動の諸特性について考察している。その結果、(1)荷捌き施設は整備不足の状況にあり、荷捌き駐停車の大半が路上で行われていること、(2)荷捌き車両の駐停車時間は一般的に短く、通常20分〜25分程度がその上限であること、(3)目的施設・地区の規模・用途と荷捌き活動量との間に関係が見られること等が明らかになった。さらに本章では、荷捌き問題が発生するメカニズムを明らかにするとともに、荷捌きスペース整備へ向けての課題の抽出・整理を行っている。
次に第3章では、第2章で整理された荷捌きスペース整備へ向けての課題を基に、整備対象地区と整備水準、官民の役割分担と整備主体、整備パターンの分類、整備必要量の算定、配置・構造等に関する計画基準、及び整備手法と整備・運用方策といった視点から、荷捌きスペース整備の基本的な考え方を整理している。ここでの知見は、(1)荷捌きスペースの整備パターンは、整備の優先順に「施設対応型」、「路外対応型」、「路上対応型」の3つに分類することができ、当該パターン別に配置・構造に係る計画基準や整備方策・手法等が整理されること、(2)荷捌きスペースの整備必要量は、用途別標準原単位を用いることによって算出可能であること等である。
さらに第4章では、第3章の基本的な考え方を踏まえ、具体的な地区における荷捌きスペース整備計画策定のプロセスを提案するとともに、当該プロセスを実行するにあたって必要となる全国ベースでの調査のあり方について、調査項目や調査方法等に関する検討を加えている。
以上の研究結果より、荷捌き活動の特性と荷捌きスペース整備へ向けての方向性が明らかにされたが、今後はこうした結果を踏まえ、適切な調査の実施とデータの蓄積を図るとともに、実効ある施策展開に反映していく必要がある。
最後に、本研究を進めるにあたり御協力いただいた上野和彦氏(株式会社日建設計)、大沢仁氏(同)に厚く御礼を申し上げるものである。
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