構造用集成材の耐火性能実験
中村 賢一, 最上 浤二
建築研究資料 No.56, December 1985, 建設省建築研究所
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<概要> |
本報告書は,構造用集成材の柱,はりおよびこれらの接合部の耐火試験の結果をとりまとめたものである。これらの耐火試験は,構造用集成材による構造部材の火災時における燃焼特性および力学的特性を明らかにすることによって,これらの耐火性能を評価することを目的として行ったものである。
種々の断面の大きさをもち,また樹種も異なる柱とはり,および種々の構法によって接合された柱とはりの接合部について,加熱試験または載荷加熱試験を行った。その結果,構造用集成材の炭化速度は,JIS−A1304に規定されるような標準火災のもとでは,0.6〜0.7mm/分であることを確認するとともに,この炭化速度を用いて部材断面の未炭化部分の大きさを求め,この断面の大きさに基づいた構造設計を行っておけば,構造用集成材による部材は,火災時にも十分な耐力を保持することができるとの結論を得た。
接合部におけるはりの変形量から判断して,輪型ジベルあるいはStreif金物を用いた構法による接合部の耐火性能は,その他の接合部の耐火性能よりもかなり高いことがわかった。これは,上記の接合金物が柱またははりの内部に埋込まれているため,火に直接さらされないことによる。また,接合のために用いる鋼板,ボルトを埋木あるいは木栓で被履することは,これらの断面が小さくても,接合部の耐火性能向上に大きな効果をもつことが明らかとなった。なお,わが国の在来構法による接合部は,接合するために必要な部材の切り欠き部分が大きいので,その耐火性能は一般に低い。この接合部の耐火性能を向上させるためには,部材断面および部材相互の掛かりを大きくするとともに,接合部に隙間を生じさせない高い施工精度が必要である。
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