■建築研究資料

我国の枠組壁工法に関する技術開発研究の動き

有馬  孝禮

建築研究資料  No.32,  1981,  建設省建築研究所


<概要>

  昭和49年7月枠組壁工法の技術基準が建設省告示として制定され,建築基準法第38条の規定に基づく大臣認定を必要としないオープン化が実現した。本工法導入の背景には本工法が住宅生産の工業化と従来と異なる現場生産における近代化,合理化を促進しうる可能性を有していることが挙げられていたが,本工法が我国の木造在来工である軸組工法と異なる構造体系であること,気象,生活様式など設計上の諸条件が,北米諸国と異なることから,その告示は我国の諸条件を充分に反映したものではなかった。このような背景をふまえ,本工法を正しく定着させ,広く普及させるため建設省において,総合技術開発プロジェクト「小規模住宅の新施工法の開発」が建設省建築研究所を実施指導機関として,昭和49年から約2年半にわたり官学民共同で実施された。
  この「小規模住宅の新施工法の開発」では枠組壁工法に用いられる材料,部材などの構造,防火の両面からの大規模な実験と実大実験が行われ,各種試験方法と新しい設計法の開発など本工法発展のための指針が示された。これらの成果をもとに昭和52年7月建設省告示の改訂,住宅金融公庫住宅工事標準仕様書等の改正が行われたことは周知のところである。また関連諸団体においても新しい材料,部材の試験がこれらの試験法に従って実施され,それらの結果が各種仕様書に生かされるとともに,合理化,性能向上あるいは資源の有効利用などへの地道な努力が続けられていることは,その波及効果として大きく評価されていいであろう。
  この間,枠組壁工法の普及は導入当時期待された建設戸数の飛躍的な伸びはないまでも着実な動きを見せている。たとえば住宅金融公庫融資における一定仕様の枠組壁工法住宅の不燃構造としての取扱い,公共事業体でみられるタウンハウスによる団地づくりは本工法のもつ材料,構法,施工におけるハードな面とソフトな面の可能性追求の融合の成果といえるであろう。
  枠組壁工法の導入,総合技術開発プロジェクトの実施,タウンハウスの建設に至る一連の技術開発は,実験,調査の蓄積を基礎として組立てられている。その構法上の仕組は木材,合板など主要構造材料を規定し,構造計画および施工基準が細部まで示されているところに特色があり,種々の問題を検討するときには,この仕組を基本にした上でなされないと本質をはずれた評価となる恐れがある。
  本資料はこのような観点から総合技術開発プロジェクト「小規模住宅の新施工法の開発」にはじまる一連の技術開発研究の動きとその概要をまとめたものである。
  とくにここでは国の研究機関及び関連団体の委員会等による技術開発研究のうち実験を伴ったものに絞り,研究の位置づけと実験の内容及び成果の概略を整理している。


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