■建築研究資料

No.208号(2023(令和5年)7月)

既存RC 造ピロティ建築物の迅速な補強工法に関する研究

向井智久,渡邊秀和,谷昌典,
堀伸輔,前川利雄,服部翼,松浦恒久,松本大亮,西村英一郎

国立研究開発法人建築研究所


    
<概要>
 

 鉄筋コンクリート造の共同住宅において多く用いられているピロティ形式の建築物は1995 年の兵庫県南部地震において層崩壊が確認され,その構造的脆弱性が明らかになり,その後の告示改正や建築物の構造関係技術基準解説書においてその設計方法の改善が強く推奨されてきた。そのような中,2016 年に発生した熊本地震において,上記の告示改正以前に設計され,1 階には耐力壁や袖壁を有したことで層崩壊を免れたものの,大破となった事例が確認された。この建築物では,ピロティ柱のせん断破壊,ピロティ階直上の耐力壁に取付く2階枠梁端部の破壊,ピロティ柱の柱梁接合部の被害などが確認され,大地震後の継続使用が喪失した。これらの部材の破壊モードの内,2階枠梁端部やピロティ柱の柱梁接合部の破壊については,当該地震が発生した当時の設計基準においても想定されていない破壊モードであり,これらの被害軽減のための検討はほとんど行われておらず,その被害防止を目的とした損傷軽減できる補強工法やそのための補強設計法等に関する検討を行うことは喫緊の課題である。また,今後の建築物においては大地震後の継続使用性を確保することが求められることを想定すれば,地被災建築物の早期復旧を実現できる補強工法やその設計法が必要であり,それらの検討を行うこともまた重要である。
 そこで本研究では,熊本地震で被害が確認された鉄筋コンクリート造ピロティ形式建築物を対象として,大地震により被害を受けたとしてもその後速やかに建築物を補強することで継続使用性を高めることを目標としていることから,迅速に補強できる工法の条件を整理した上で工法としての必要要件を纏め,その補強工法の一例として補強材として超高強度繊維補強コンクリートを用いた補強設計法に関する一連の部材・架構実験および解析研究を実施した。また地震発生前に実施する補強だけでなく,地震発生後に迅速に補強するための設計法および施工方法についての検討も実施した。以上の検討により,建築物の地震後継続使用性の確保を目的として,既存鉄筋コンクリート造ピロティ形式建築物を対象とした迅速な補強工法の設計法に資する技術資料をとりまとめた。


表紙・はしがき・概要・目次      317KB
第1章 序論 1,687KB
第2章 損傷後補強としてUFC パネル挟込工法を施したRC 造ピロティ柱の実験 9,839KB
第3章 迅速な補強工法を施したRC 造ピロティ柱の実験 14,756KB
第4章 構造詳細を改善したUFC パネル貼付工法を施したRC 造ピロティ柱の実験 36,452KB
第5章 柱および梁にUFC パネル貼付工法を施したRC 造ピロティ架構の実験 16,199KB
第6章 端部増厚した分割UFC パネル挟込工法を施したRC 造ピロティ柱の実験 26,076KB
第7章 迅速に施工できる補強工法を施したRC 造ピロティ柱部材の復元力特性評価 905KB
第8章 UFC パネル貼付工法を施したRC 造ピロティ架構の設計法 4,483KB
第9章 結論 292KB
付録1 補修モルタルの一軸圧縮実験 2,249KB
付録2 迅速な補強工法に関するデータベース 1,790KB
付録3 弱材齢で損傷を受けたコンクリートの材料特性 1,147KB
付録4 UFC パネル孔開け施工試験 1,721KB
奥付 110KB
全文 112,610KB


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