■建築研究資料 |
No.205号(2022(令和4年)4月) |
<概要> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
組積造壁の構造特性を把握するため、全充填型補強組積造(Full-Grout Reinforced Masonry:RMF)壁、部分充填型補強組積造(Partial-Grout Reinforced Masonry:RMP)壁、先積型枠組組積造(Before-Cast Framed Masonry:CM)壁、及び、後積型枠組組積造(After-Cast Framed Masonry:MI)壁の4つの構造形式に分類した上で、それぞれについて文献調査により実験データを収集し、これらを回帰分析して導かれる回帰式や既往の評価式をもとに強度と変形を推定した。収集したデータ数は、全充填型補強組積造(RMF)壁、部分充填型補強組積造(RMP)壁、先積型枠組組積造(CM)壁、及び、後積型枠組組積造(MI)壁のそれぞれで、149体、114体、150体、及び、130体であり、計543体である。 実験データと回帰式による推定結果との比較から、強度(ひび割れ強度、降伏強度、最大強度)、及び変形(ひび割れ変形、降伏変形、最大強度時変形、限界変形)共に、回帰式により概ね良い精度で推定できることを示した。ただし、変形の場合では実験結果と推定結果との差異が大きくなる結果となった。 また、鉄筋コンクリート造壁についても、組積造壁と同様の回帰分析を行った。その結果に基づき、鉄筋コンクリート造壁と各組積造壁の復元力特性を比較したところ、組積造壁の降伏強度及び最大強度は鉄筋コンクリート造壁と比較すると総じて低くなる傾向が認められた。さらに、組積造の各構造形式で復元力特性を比較すると、MI壁の限界変形は、ばらつきは大きいが、他の構造形式よりやや大き目になる傾向があることが明らかとなった。 本研究で作成した構造実験データベースとこれを用いて導かれた回帰式については様々な活用方法が考えられる。その一例として、鉄筋コンクリート造を主な対象とした耐震診断法を、本研究で得られた回帰式を用いて組積造壁を有する建築物に適用する方法を示した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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