■建築研究資料 |
No.195号(2019(令和元年) 10月) |
<概要> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年の東日本大震災では,建築物の杭基礎に発生した被害が原因で上部構造物が傾き,当該建築物が地震後継続使用できなくなる事例が報告されている。現行基準における杭基礎は,中小地震における損傷制御を目的とした設計が行われているものの,大地震後の継続使用性を確保するための終局限界状態の構造性能に基づく設計はほとんど行われていない。そのような中,建築研究所では2013年から3カ年実施した研究課題「庁舎・避難施設等の地震後の継続使用性確保に資する耐震性能評価手法の構築」や基準整備促進事業課題である「基礎ぐいの地震に対する安全対策の検討」において,杭体やパイルキャップなどからなる杭基礎構造システムの大地震時の損傷評価を目的として,東日本大震災における地震被害の収集・分析や被害再現のための構造実験,地震後継続使用性を確保するための構造計算方法について検討を行ってきている。その検討において,既製コンクリート杭の大きな軸力を負担した場合の構造性能評価やパイルキャップ部分の終局強度評価,場所打ちコンクリート杭の補修補強後の構造性能等に関して課題を残していた。 そこで建築研究所では2016年より3カ年で,指定課題「既存建築物の地震後継続使用のための耐震性評価技術の開発」の中でコンクリート系杭基礎構造システムを対象とした構造実験を実施し,大地震後の継続使用性を確保するための部材の構造性能評価に資する技術資料の収集を行った。具体的に本課題では,前課題で問題となった上記の課題についての検討を実施するとともに,靱性のある終局状態の確保の実現に向けて杭頭接合面破壊に着目した検討を実施した。 本資料では,大きな軸力を負担した既製コンクリート杭の構造性能評価のための構造実験を実施し,その結果を2,3章に示した。また,大きな軸力を負担した場所打ち鋼管コンクリート杭の構造性能評価のための構造実験を実施し,その結果を6章に示した。4章では,場所打ちコンクリート杭の補修補強後の構造性能の把握を目的とした実験を行った結果を示した。また,5章ではパイルキャップ部分の終局強度評価としてト形部分架構試験体を用いた実験結果を示した。7,9章では靱性のある終局状態の確保のための基礎検討として,杭頭接合面破壊に着目した杭基礎構造システムのト形部分架構試験体を用いた実験の結果を示した。8章では,杭頭接合面におけるコンクリートの支圧強度および圧縮靱性確保のための要素実験を実施した結果を示した。10章では,2章〜9章で実施した実験および検討結果をまとめて,本研究で得られた成果と今後の研究課題を示した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|