■建築研究資料 |
「平成16年新潟中越地震における小千谷総合病院の地震応答に関する調査報告書」 飯場正紀 1)、福山 洋 2)、齋藤大樹 3)、向井智久 4)、鴇田 隆 5)、溜 正俊 6)、 建築研究資料 No.105, 2007, 独立行政法人建築研究所 |
<概要> |
2004年10月23日の新潟県中越地震において、激震地に位置した「小千谷総合病院」は大きな被害を受け、災害時医療の拠点となるべき病院としての機能を一時的に喪失することとなった。
しかしながら、当病院の関係者、設計・施工会社の迅速な対応により、病院の大部分の機能は被災後16日で全科目での診療が可能となるほど回復し、これは特筆に値する。当病院は、全6棟の建築物から構成されるが、それぞれの建築物は平面的な大きさ、階数、構造形式、基づく耐震基準が異なるなど、条件がさまざまであるという特徴を有する。
例えば、東棟は、阪神淡路大震災において中間階破壊などの大きな被害が見られた中高層の鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造であり、検査棟は短柱のせん断破壊が生じやすい腰壁垂れ壁を有する鉄筋コンクリート(RC)造フレーム構造である。
これら以外の4棟は現行基準(新耐震基準)に基づく設計であり、中でも当病院に付属する老人福祉施設は激震地に建てられていた唯一の免震構造建築物である。
このように、建設年代や構造特性の異なる建築物が、ほぼ同一の地震動を受けており、それぞれの建築物の地震時挙動を検討し、構造被害の程度が病院の機能やその回復に関連する復旧性にどのような影響を及ぼしたかについてまとめることは、今後の既存建築物の耐震性を考える上でも、また、地震後の事業の継続性を検討する上でも、極めて有用な意味を持つと思われる。 そこで、本報告書では、地震後の機能維持が必要となる建築物の耐震性に関する考え方を明らかにすることを目的として、多様でかつ有用な情報が得られた小千谷総合病院を対象とし、病院建築物の被害調査と地震応答解析結果に基づき、以下に示す項目について取りまとめたものである。 ・ 免震建築物の地震時挙動と機能維持 その結果、災害時に医療拠点としてその機能を確保する必要のある公共性の高い病院は、新耐震設計法の求める構造性能を満たしていても、業務を継続できる性能が必ずしも十分には確保されているわけではないことが明らかとなった。このことは今後、地震後の防災拠点・医療拠点等としての役割が求められている建築物においては、建築構造としての安全性の確保のみならず、建築物の早期回復を含む機能維持の重要性を示しており、大地震後の機能維持も含めた建築物の設計並びに評価手法を提案していく必要性を強く認識させる。これらのことを踏まえると、今後検討の必要な項目として、以下ものが挙げられる。 1) 独立行政法人建築研究所 構造研究グループ上席研究員 |