建設省建築研究所50周年
国際シンポジウム
「持続可能な都市実現のための建築研究」
目的
渡辺一正
炭酸ガスの増加や地球の温暖化から地球の危機が叫ばれて以来、どう生き延び、どう地球を持続させるかが、居住環境に携わる私たちの最も重要な課題の一つとなっている。人間が大変多くのエネルギーを消費し、どの様なものにも耐用年限があることは良く知られている。永久不滅のものは存在しない。しかし、もしエネルギー消費を削減し、建物の耐用期間を引き延ばすことが出来るなら、地球の危機に歯止めを掛けることが出きるのではなかろうか。もし、エネルギー循環並びに物質移動の系が、局所の消費を再生産・再流入に見合う範囲に収め、再利用を適正に行い、総体として収支の均衡が得られるなるば環境問題は解消しよう。循環系を可能な限り小さな単位で閉じるなら、全体の系を閉じることは容易になると仮定出来る。持続可能な都市の概念は、このような図式に基づいて、エネルギーの消費と生産の均衡を達成する道具として生み出された。
1995年1月17日、耐震工学研究は十分に進歩し、地震対策は十分に施されていると信じられていた日本の神戸に地震が起き、6,000人以上の人々が死亡し、必ずしも老朽化していない新しい建物も数多く著しい被害を被った。この被害は、より信頼性の高い建築技術を確立し、持続可能な都市を実現する必要性を喚起したが、同時に、自然の力を克服することが如何に難しいかを改めて私たちに示したと言えよう。
- 私たちは、建物の崩壊が始まる位置を予測できるか?
- 私たちは、建物の破壊モードを制御し、補修の容易な順に破損するように計画できるか?
- 私たちは、必要な総エネルギー並びに物質が最小となるように建物のメンテナンスを計画出来るか?
- 私たちは、建物の各々の構成部品の劣化過程や耐用年数を予測出来るのか?
- ライフサイクルエネルギーの原理を導入すれば、耐久性研究の限界を補うことが出来るのか?
- 取得される太陽エネルギーの範囲内で十分に快適な環境を提供出来るのか?
- どのような気候条件においても十分な耐久性を示す断熱構法を提供出来るのか?
- 持続可能な都市は、国際的な交通やコミュニケーションが益々活発になりつつあるこの地球において、エネルギーと物質の消費と生産のバランスを再構築する手段となり得るのか?
- また、そこで生活する人々が年月と共に貴重な文化財の蓄積を増やし、より豊かな住文化を形成する場となるのか?
私たちは、このような多くの課題に直面している。
持続可能な都市に関するこの国際シンポジウムは、建設省建築研究所の50周年に合わせて開催され、持続可能な都市の実現に役立つ建築研究を明らかにする討議の場となろうとしている。この課題に興味を持つ全ての方々には、是非とも参加し、活発な討論を行い、このシンポジウムを実り多いものとしていただきたい。
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